売場改善による売上げや集客の向上を図る手法がVMDですが、
売り場での「売れない」「集客できない」要因は様々で、物理的に売場を変えただけで劇的に効果が上がるとは限り
ません。では売場以外にどんな問題があるのでしょう?
例えば、陳列やレイアウトの問題だけでなく、商品が商圏内の顧客ニーズに合っていない、接客の仕方がよくないなど、
売上げが芳しくない店には、複数の問題が隠れていることがよくあります。
それは一見しただけでは見えにくいものなのですが、マイナス要因を抽出するには果たして何をすればよいのでしょう?
仮説検証しないといけないのです。
例えば、入店率はいいにもかかわらず買い上げ率がよくないのなら、接客に問題があるのかも知れません。
お客様に商品の特徴や、商品を購入することで得られるメリットを上手に伝えることが出来ているでしょうか?
入店率がよくないのは店舗に魅力を感じないから。あるいは雑然として品揃えが分かりにくい、フェイシングが悪く
商品群の特徴が伝わらないなどの要因も考えられます。
入店して手にとって見たものの、あと少しのところで購入に至らないのは、お客様が財布を開くことをためらう何らか
の障壁があるからです。まず仮説を立て、お客様の行動を観察し、分析してみましょう。
仮説を立てるとは、例えば「この商品に説明POPを設置したらどうだろう?」
「ボディーの位置を店奥に置くとマグネット効果で入店率が上がるかも。」など、効果的と思われるアイデアをアレ
コレ実践してみるのです。
売場を整理整頓してラインナップが一目で分かる様に配置することで、通行人がお店に興味を持ち、入店率が上がる
かもしれません。また、商品の特徴(素材、メーカーのこだわり、他社との違いなど)やブランドのストーリーを
今一度よく理解した上で接客することで、購入することのメリットが相手に伝わり、売上げに繋がるかも知れません。
「こうしてみてはどうだろう?」を実践してみましょう。店前で立ち止まる人がいた、滞在時間が延びたなど、
なんらかの良い変化があった時、今まで何が入店、買い上げの障壁だったのかが立証できます。
また、お客様との会話の中で、要望や意見を汲み取り、本部にフィードバックして、よりニーズに合った商品開発
することも、お店のファンを増やすための重要な要件です。
店内にディスプレイを設置するに当たり、まず何から手を付けようと思案するかもしれません。展示商品が決まってい
る場合も、そうでない場合も、ディスプレイ構築の際に必要な幾つかの「要素」を、頭の中の「制作の為の道具箱」
として計画するといいでしょう。その際、スケッチを描くなど、視覚化してもいいですし、画像やイラストをコラージュ
したイメージボードを制作して他人に意見を求めてもいいでしょう。
・テーマ ・サブテーマ ・商品 ・構成 ・カラー ・ディスプレイ用品
この要素を、制作の際の手立てにすることで、スムーズに制作手順を踏む事が出来ます。
ディスプレイする場所や商品によっては、必ずしもこの要素全てを採用しなくてもいい場合もありますが、練習の際
で取り入れ、イメージ形成のための手順にして実践する習慣を付けると、悩まなくて済みます。
小売店のインテリアデザインは、商品やブランドの特性に合わせつつも、顧客の好みや購入を引き出すことが重要
です。以下に、一般的な顧客にサポートされる可能性が高い小売店のインテリアデザインの特徴をいくつか挙げて
みましょう
ブランドイメージの反映:小売店のデザインは、ブランドのイメージや格式(高級 カジュアル)と一致している必要
があります。一貫性があり、顧客がブランドを識別しやすい環境が重要です。
視覚的な吸引力:色彩的な色彩や途中ディスプレイ、美しい照明は、消費者の注意を引くのに役立ちます。視覚的な
影響は購入行動に影響を与える可能性があります。
使いやすい配置:商品やセクションの配置が使いやすく、スムーズな移動ができるように工夫されていると、顧客は
ストレスなくショッピング体験を楽しめます。
快適な雰囲気:快適な照明、適切な温度、清潔感のある環境は、お客様にとって居心地が良く、滞在時間増になり
ます。
インタラクティブな要素:顧客が製品を訪れる、触れる、体験することができるスペースやディスプレイがあると、
購買が高まります。
デジタルテクノロジーの活用:店舗DXを活用したディスプレイ、情報提供のためのデジタルサイネージ
など、最新のテクノロジーを活用することで、顧客に新しい体験を提供できます。
季節やイベントに合わせた変更:季節や特別なイベントに合わせて、店内のディスプレイや演出を変更することで、
顧客に新鮮な印象を訴求することができます。
社会的な要素を取り入れる:サステナビリティや社会的な責任を強調するデザインが、現代の顧客に好まれることが
あります。
これらの要素を組み合わせつつ、具体的な店舗の特性や目標層に合わせて調整することが重要です。また、定期的な
フィードバックや調査を通じて顧客の意見を取り入れ、改善を行うことも重要です。
お菓子屋さんのショーウィンドウは、お店の魅力を引き立て、通行人の興味を引く重要な要素です。
季節やイベントに合わせる: イベントや季節に合わせたテーマを取り入れることで、お客様に新鮮さや季節感を感じさせることができます。
例えば、クリスマスやバレンタインデーには、それに合った装飾や商品をショーウィンドウに展示しましょう。
カラフルで鮮やかなデザイン: 視覚的な刺激が重要です。カラフルで鮮やかな色彩を取り入れ、商品が一層引き立つように工夫しましょう。
彩り豊かなデザインは通行人の目を引きつけます。
商品のアート的な展示: お菓子をアートのように美しく配置し、それをショーウィンドウ内で表現することで、商品の美味しさや高級感を
アピールできます。食欲をそそるようなアート的な演出が効果的です。
季節ごとのテーマを展開: 季節やテーマに合わせた小さなストーリーをショーウィンドウに展開すると、通行人はそのストーリーに興味を持ち
入店への誘いになります。例えば、季節の変化や製法にこだわった話を加えると良いでしょう。
試食やプロモーションの告知: ショーウィンドウに試食の告知や特別なプロモーション情報を掲示することで、興味を引いたお客様が実際に店舗に
足を運ぶきっかけとなります。
窓越しの工夫: ショーウィンドウのガラス越しに店内が見えるようにし、店内の雰囲気や活気を感じさせると良いです。また、外からでも商品がよく見えるように工夫すると良いでしょう。
定期的な更新: 定期的にショーウィンドウの展示を更新することで、リピーター客や近くの通行人に新しい商品や情報を提供できます。商品が頻繁に変わると、興味を持ってもらえる可能性が高まります。
ブランドの特徴を強調: ショーウィンドウを通じて、お店のブランドや特徴を強調しましょう。独自の製法やこだわりが伝わるようなデザインや展示が効果的です。
これらのアイディアを組み合わせながら、お菓子屋さんのショーウィンドウを工夫することで、お店の魅力を最大限に引き出すことができます。
コロナ禍も落ち着き、国内旅行のみならずインバウンドも回復しました。売店のあるホテル、旅館で、土産品を販売
する際の旅行客への訴求方法、ディスプレイなど土産品売り場でのディスプレイや陳列のコツとは?
地元の特産品を強調する:
視覚的に魅力的なディスプレイ:
試食や試着の提供:
地元のストーリーを伝える:
観光スポットとの連携:
価格帯を幅広く設定する:
季節やイベントに合わせた商品ラインナップ:
スタッフのトレーニング:
これらのアイデアを組み合わせて、ユニークで魅力的な土産品の販売環境を構築することができます。
路面店をお持ちの方から、入店率の悪さを相談されることがあります。
SCや百貨店のテナントと比べて、路面店舗は入店までのハードルが高く、新規客獲得に苦戦しているお店が多い様
です。お客様の心理的ハードルを下げて入りやすいお店にするために以下の要件を参考にしてください。
業種が分かりやすいか:
取扱商品やサービス内容が瞬時に伝わっていますか?看板が英語のみの表記だったり、看板の角度、文字サイズ、
通行人や走行車からの視認性を確認しましょう。また、商品や業種のイメージと乖離した外観は紛らわしく入店率に
影響します。~らしい外観か、顧客目線で自店を見てみましょう。
店内見通し:
店の中が見えにくいと入店意欲が湧きません。店内の雰囲気、品揃え、価格帯がある程度確認出来る事が理想です。
適切な照度:
人間には暗い場所に恐怖を感じる心理があり、それに反して「向日性」という明るい方に進みたくなる特性があります
店内が暗いと、入店意欲の有無以前に開店しているかも分かりません。店内照度が充分か、外部から確認してみま
しょう。
店前販促の実行:
店前販促とは、お店が提供するサービスや商品の情報を店前で訴求し、入店を促すためのコミュニケーションの一つ
です。方法としては、
販促ツール(POP等)の活用が簡単で、既製品が手に入れやすいです。オリジナルののぼりやタペストリーを作ると、
お店の独自性を打ち出せます。宣伝する内容は、キャンペーン、新商品情報、イベントなどです。お客様が店に興味を
持ち、価値を感じることが来店のきっかけになります。店前も賑やかになり、「お店らしい佇まい」「入りやすさ」
が醸成されます。すぐに成果が出なくても、定期的に新鮮な情報を店外に発信することで、近隣の潜在顧客は店づくり
の熱心な姿勢に共感し、親しみを感じ、最終的には集客だけでなく、店のイメージアップにも貢献します。他にも、
駐車場の停めにくさ、立地、競合店の存在など入店の障壁となる様々なマイナス要因がありますが、それらを払拭する
付加価値をしっかり伝え、わざわざ訪れたくなる「お店力」を磨いていきましょう。
共感という言葉が近年、社会活動や商品開発に重要だと言われています。売り場についても、共感を取り入れ、
集客やリピートに繋げたいですね。
では、売り場に共感を落とし込むにはどうすればいいのでしょう?売り場、店舗に反映させるのですから、先ずは見
た目から共感を感じてもらわなくてはいけません。そもそも店舗における共感とはどのような事でしょう?
辞書では、「他人の考え、主張、感情を、自分もその通りだと感じること。また、その気持。同感」(コトバンク)
物理的環境において、共感を店内外で訴求するには、共感の要件を視覚化して伝わりやすくします。この意味を店舗用
に私なりに解釈してみました、「~らしい外観 ターゲットの嗜好に合っている 親しみ コンセプトが伝わる」
などです。この要件を「外観」に落とし込んで、集客、売り上げともに上昇した店の事例をご紹介します。
改善前の画像です。
何のお店か瞬時に伝わりましたか?また、入りたいと思うような佇まいでしょうか。賑やかさや店舗らしい演出が
必要ですね。
改善後です。
ケーキ屋さん「らしい」外観に変身しました。店内も見通しが良くなり、店の雰囲気やお客さんの有無などが
視認でき、安心して入店する雰囲気と、植栽や誘目性のあるテントが美観もウェルカム感も醸成しています。ターゲッ
トである近隣の主婦の方たちにも訴求できるデザインになりました。
外観だけでなく店内の商品や説明POPにも反映させ、来店客に共感してもらう工夫を凝らし、リピートに繋げたい
ですね。
小売店の皆さんは当然毎日「業務日報」を書いていると思います。最近はID・POSレジも導入している店舗も多く、商品
だけでなく顧客データも正確に分かるようになっています。
日報は何のために書いているのか? 本部がどう活かしているのか?意識して書いているでしょうか?
日報の項目は、来店客数、売れたアイテム、購入金額、総合的なスタッフ所見などですが、もっと具体的な顧客の動向
や商品の「売れ方」を記入し、フィードバックすることで、商品開発や売り場作りに有効な資料となります。
私は「顧客チェック表」と言う独自の日報を担当者に手渡しています。これは入店した顧客ごとの情報を記録する日報
で、項目は
①店前で立ち止まった客数(分かる限りで、歩調を緩めた客数も)
②実際に入店した客数
③滞在時間(大体でいい)
④商品を手に取った
⑤接客の有無
⑥買い上げ有無
⑦入店したがスルーした客の様子
⑧顧客ごとのスタッフ所見
など、顧客一人一人の買い方や接客での会話が今後の商品開発の参考になります。売り場での業務が増えて面倒ですが、
できる範囲で構いません。
店前で立ち止まった人数 →ディスプレイ制作の参考になります。滞在時間の長さはゾーニングや棚割り、マグネット
売り場の有無など売り場構成が作用します。商品を手に取ったけど買わなかったのは、入店はしたのでディスプレイや
レイアウトには問題なし、でも接客や商品(デザイン、値段、POP)に改善点があるのかもしれません。スタッフ所見
には性別、年代、主婦かOLか、会話の内容なども書くと売り場のみの情報を社内で水平展開できます。
入店したのに買わなかった、ディスプレイに立ち止まったが入店しない、店内の何を見て入店したかなど、様子を
つぶさに観察して、そこから抽出された課題を本部と売り場で共有してください。
売り場が煩雑に見える。片づけているのに何故か散らかっている様でまとまりがない。このようなご相談を受けた時、
原因は大体推察出来ます。
色々ある中で、最も多い原因の一つは、「異なる要素の物が売場の中に多数混在している」異なる要素とは、例えば、
人間は色々なものをバラバラでなく、まとまりのある形態として見ようとする知覚の働きがあり、色、形に関連性の
ないものは、混とんとしたもの、意味のないものとして脳が解釈してしまい、不快感を覚えます。
③の、イメージの違うエレメントを同空間に意味もなく氾濫させている売場はよく見受けられます。
また、インテリアデザインのテイスト、スタイルのミスマッチも多いです。店内を一部改装した際、元のモダンな
テイストの造作に、素朴で力強いナチュラルな什器やディスプレイ用品が加わり、ちぐはぐなインテリアデザインに
なっていて、視覚的に違和感を感じ、不自然で落ち着かない店内になってしまっている店舗がありました。商品ディス
プレイの際、使用する装飾品に関しても、店内デザインの(商品も)イメージに合っているか、見極めながら選定して
いただきたいです。
また、①の、パッケージデザインについては、多くのNB商品を取り扱っている店は仕方ないのですが、自社商品の
パッケージをデザインする際、店頭に並べた時の売場の見え方も考慮してください。非常に多種類のアイテムを取り扱
っているディーン&デルーカの売場が魅力的なのはここのポイントも抑えられているからです。
パッケージデザインの統一までは無理だとしても、②のサイン、POPのデザイン統一で、かなり店内がスッキリ改善
できることもあります。サイズ、色、フォントがバラバラになっていないでしょうか?サイズや色は2種類くらいに
限定しましょう。
美しい店内のポイントは「統一感」です。
今回は店内照明についてお話します。
まず、路面店がよく陥る店舗照明の失敗例について。日中の外が明るい時間帯に自店の店内の明るさが十分であるか
確認したことがありますか?
と言うより、意識した事すらない方も多いのでは?外が明るい昼間などは店内の照度が足りていないと外部からは
ものすごく暗く見えてしまいます。
店内が暗い事でお店にどのようなマイナス要因が生じるかというと、人は暗~い店舗に入りたいと思うでしょうか?
店内が良く見えない、店内の様子が分からない、品揃えが分かりにくい、故にお店に興味が持てない。当然入店率に
直結しますね。昼間の太陽光のもとでの水平面の明るさは100,000ルクス(明るさの数値)コンビニやドラッグスト
アの必要とされる明るさは約1,000~2,000ルクス。かなりの照度を確保している業種の店舗でも外部との数値の差は
これだけあるのです。
人間には「向日性」という特性があり、生理的に明るい方向に行きたいという欲求があります。暗い場所には恐怖感
を覚え、心理的に入りたくないと思って当然です。
比較的オープンな形式の商業施設のテナントに比べ、路面店は入店のハードルが高いです。一度入ったら逃げられない
と言う恐怖心が入店を躊躇してしまう障壁になってしまうし、ましてや暗くてよく分からない(得体の知れない)お店
に勇気を振り絞ってまで入店する人はそうそういないでしょう。事実、売場を明るくすると入店率、回遊性が向上した
事例も多くあります。入店率がイマイチと思われているのでしたら、まず自店の照明計画を見直してみてはいかがで
しょう。では、照明器具を十分な台数設置しているのに何故か外部からは暗く見える原因は??
それは配置場所や器具選定が適当ではないのです。外部の見込み客に十分な明るさを感じてもらうコツとは??
是非センス&セオリーにお問い合わせください(笑)
最近ご依頼が多いのは、イベントでの商品ディスプレイの指導です。
物産展、商談会等のテーブルやブース内で暫定的な売り場を作って商品を陳列、展示するわけですが、ものすごく限
られた条件下で、自社の世界観を表現し、商品訴求するにはどのような事に留意したら良いでしょう?
手順としては通常の売り場とほぼ同じです。ザクッと列挙すると、
①当日最も打ち出したい商品(主役)を決める
②それに関連したザブの商品を決める
③ブースのデザインを考えプランする
・訴求したい商品に合ったテーマを決める
・テーマカラーを決める
・テーマに合ったディスプレイ用品を決める
④POPを必ず制作する
・キャッチコピーで通行人に瞬時に訴求ポイントが伝わるように
・食品の場合はシズル感のある画像を載せる
⑤どんな商品を扱っている企業かすぐに理解できるブースである事(会社名は三
の次)
⑥五感に訴える工夫をする
・軽妙なトークで呼び込み
・試食 香りで味覚や嗅覚に訴求
・動きのあるもの(デジタルサイネージなどを活用)で注意を引く
⑦色の塊を作る。
・パッケージ、POP、テーブルクロスなど、ブースを構成する要素の色に
統一感を持たせる。
など、大まかに言えばこんなところです。
最後の、「色の塊を作る」とは、ブース(テーブル)を同じ色味で構成するという事ですが、イベントの会場内で
ひときわ目立つ技(ワザ)の一つです。
人の目(脳)は「まとまり」を常に求めようとする特性があります。
多色使いでゴチャゴチャの売り場は間違いなくスルーされます。
また、主役商品を決めるというのは、「自分が買うべき一番オススメのモノ」を決めて欲しいと思う顧客心理からと、
ディスプレイされた主役に視点を瞬時に定め、次に関連する他商品にも視線が移るという流れを利用してくまなく
全商品を見てもらうための仕掛けです。
イベント会場での売り場は、お客様の滞留時間も短くその分巧妙なテクニックが要求されます。思わず立ち止まって
しまう売り場の要件はやはり「視覚」がキーワードです。
以前、約半年間にわたり、某県の二輪車組合様の研修に講師として参加させて頂きました。
私自身、自転車にもバイクにも無縁な生活をしているので、商品知識も無く、購入時の消費者側の選択基準が
何かも分からなかったので、研修カリキュラムの中の初回セミナーでのコンテンツ作成も苦労しました。
研修ではセミナー形式の講義の他、数店舗を臨店指導させて頂きました。私もこれにあたり、地元の自転車店や
バイク店を意識して観察してみました。
主な共通課題として抽出したのは、
①店前での販促活動を行っていない
②商品在庫数過多により客導線が確保できていない
③カテゴリー別のフロアレイアウトになっていない
④適切なPOPの制作、設置をしていない
⑤試乗などの体験による販促を行っていない
の、5項目でした。
二輪車業界の実店舗は修理などの工場が併設されているお店が殆どです。そのせいか、外観は無機質で、他業種に比
べると販促物も少なく、盛況感や入りやすさの演出や工夫がが少ない様に感じました。
①「店前販促」とは
「お店が提供するサービスや商品についての情報を、店外の潜在顧客に伝え、メリットを感じてもらい、入店を促す
ためのコミュニケーションの一つ」です。店前で行う販促は、路面店の入りにくさ、わかりづらさを解消し、
入店のハードル を下げる効果があります。お客様は、店内の様子や商品構成、価格帯がどのくらいなのか、ある
程度確認できないと入店する気になりません。数あるバイク店、自転車店の中で自店を選んでもらう理由を作って
あげなくてはいけません。バイクのような比較的高価な商品は、長期戦の構えで販促活動を行うことになります。
すぐに成果が出なくても、定期的に新鮮な情報を店外に発信することで、近隣の潜在顧客は店づくりの熱心な姿勢に
共感し、親しみを感じ、最終的には集客に寄与するだけでなく、店のイメージアップにも貢献します。
販促の方法としては、メーカーから支給される販促ツールだけでなく、自店のオリジナルを制作して設置してもいい
でしょう。パソコンで手作りのPOPを制作したり、のぼりやタペストリーを制作業者に作ってもらい、お店の独自性
を打ち出して他店を引き離します。宣伝する内容は、キャンペーン、入荷情報、イベント、試乗可能など、店外の
通行人に興味を持ってもらう内容を訴求します。お客様がその店に行く何らかのメリットを感じることが入店の
きっかけになります。店前も賑やかになり、バイク店にありがちな無機質で工業的な印象も払拭され、「お店らしい
佇まい」「入りやすさ」が醸成されます。店外POPは走行車からも気づいてもらえる大きさで制作します。歩行者さえ
目に留まらないサイズや設置位置では意味がありません。また、状況が許せば商品の一部を店先に展示しましょう。
セール品など、とっつきやすい価格のものが入店のきっかけになります。
店内在庫数の多さについて今回訪問した店舗のうち半数がこの問題を抱えていました。
フロア面積に対して商品数が多すぎると、お客様が店奥まで回遊し、商品をくまなく見て回るための通路が確保でき
ない状態になります。雑然とした店内では、来店客はじっくり見て回る意欲を喪失してしまい、結果、機会損失が発生
します。また、来店客が店内でゆっくり出来る環境を作ることも、「店内滞在時間延長」を図ることにおいて重要です。
今回指導した店側からも「滞在時間が短い」との声が上がりました。また、接客用のテーブルと椅子を置いていない
店舗もありました。
店内滞在時間と成約率は比例します。お客様とのコミュニケーションにも時間をかけ、理解してもらい、購買に近づけ
るような環境を作りましょう。店内の全商品が良く視認できるかどうか、自店の回遊性を今一度確認してみましょう。
もしそうでなければ在庫を整理しましょう。整然とした店内はお客様の信頼を形成する要件の一つです。
カテゴリー別のフロアレイアウト。
前出の店内在庫整理と同時に、「ゾーニング」を意識しながら客導線を引いていきましょう。
ゾーニングとは、店内の大まかな売り場区分を決め商品をレイアウトしていくことです。先ずは商品を大きく分類して
いくことから始めますが、今回訪問した店舗の中で、特に商品点数が多いお店はこれを行っていないか、行ってはい
るけれどレイアウトが曖昧で、分類が分りにくい状態でした。中古と新車両方を置いている店は大きく二つに分類し、
わかりにくい場合はサインを設置します。さらにメーカーや車種別、または使用者別に中分類し、フロアに割り付けて
いきます。分類の切り口は様々ですが、自店の商品構成や商圏の客の優先的検討項目を考えながら分類しましょう。
この分類を来店客が大体理解できないと回遊性にも影響してきます。
どこに何を置くかは、商品同士の関連性を考えながら配置してきます。入口付近は新商品やセール品などマグネットに
なる商品がいいでしょう。また、新入学の時期には、学生向けなど、時期ごとにレイアウトを変えていくのもいいで
しょう。学生や初心者向けの傍にいきなり上級者やマニア向けの高額品を置くとどうでしょう?店内では商品同士の
関連性が高い売り場作りをした方が、お客様の興味ある商品をたくさん視認できるので、店内滞在時間も長くなり、
購入機会も増えます。
ポストコロナ時代にお客様に選んでもらえるお店とは?
コロナ禍を経て、人々の生活様式やニーズは多様化しています。ポストコロナ時代の店舗運営と言えば、
店舗DX促進がまず挙げられ、既に導入している店舗もあるでしょう。しかし、機能面の整備だけでは、日々変化する
多様なニーズや価値には対応できない事を感じている方もいるかと思います。
現代は「VUCA」の時代と言われています。VUCAとはVolatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの
頭文字を取った造語で、不安定、不確実、複雑、曖昧である事を意味します。つまり、予測困難な時代になり、
これまのデータやマーケティング施策が通用しなくなったのです。このような時代に機能面だけを強化すればいい
訳ではありません。消費者の気持ちに訴える物やサービスを提供し、記憶に残る店になる事が重要です。
ブランディング会社のC・SpaceJapanは、国内ブランドの顧客体験価値ランキングを公表した際、これまでの
調査・分析から、体験価値の重要要素を五つ挙げています。①私だけのものだと思える②私にとって意味がある
③オープンで正直である④私の立場で考えてくれる⑤いい気分にさせてくれる。これから読み取れる消費価値は
感情に働きかける事で得られる満足感です。
ちなみに顧客体験価値のランキングでは、1位:(株)帝国ホテル(あらゆるニーズに対応してくれる。
気配り目配りが行き届いている)、2位:(株)サイゼリヤ(消費者の事情を汲(く)んで値上げしない。
コストパフォーマンスの良さ)となっています。顧客の期待を裏切らず、企業イメージを毀損しない努力が評価
されています。私が長年のファンである、福岡発の食品ブランド、茅乃舎の調味料のビンのラベルはとても簡単に
剥(は)がせます。分別の際にイラっとする消費者の気持ちへの配慮です。この様な普段見えにくい所への細心の
配慮もストアロイヤリティ構築につながります。これからの店舗運営は顧客が何に価値を感じているかを理解し、
共感と信頼を得て持続的に良い関係を築いていくことが重要です。
カテゴリー別のフロアレイアウト。
前出の店内在庫整理と同時に、「ゾーニング」を意識しながら客導線を引いていきましょう。
ゾーニングとは、店内の大まかな売り場区分を決め商品をレイアウトしていくことです。先ずは商品を大きく分類して
いくことから始めますが、今回訪問した店舗の中で、特に商品点数が多いお店はこれを行っていないか、行ってはい
るけれどレイアウトが曖昧で、分類が分りにくい状態でした。中古と新車両方を置いている店は大きく二つに分類し、
わかりにくい場合はサインを設置します。さらにメーカーや車種別、または使用者別に中分類し、フロアに割り付けて
いきます。分類の切り口は様々ですが、自店の商品構成や商圏の客の優先的検討項目を考えながら分類しましょう。
この分類を来店客が大体理解できないと回遊性にも影響してきます。どこに何を置くかは、商品同士の関連性を考えな
がら配置してきます。入口付近は新商品やセール品などマグネットになる商品がいいでしょう。また、新入学の時期
には、学生向けなど、時期ごとにレイアウトを変えていくのもいいでしょう。学生や初心者向けの傍にいきなり上級者
やマニア向けの高額品を置くとどうでしょう?店内では商品同士の関連性が高い売り場作りをした方が、お客様の
興味ある商品をたくさん視認できるので、店内滞在時間も長くなり、購入機会も増えます。
適切なPOPの制作 設置
店内の商品に付けるPOPについても多く指摘しました。商品POPには値段が書かれた「プライスカード」と、
説明が書かれた「ショーカード」があります。バイクや自転車はプライスとスペックを一緒に表記したPOPが殆ど
でした。商品POPの役割は多岐にわたり、上手に活用すれば「物言わぬ店員」として接客してくれる頼もしい販促
ツールとなります。
【サイン代わりになる】
前出したゾーニングの際、例えば中古車、新車の区別を一目瞭然にできる様、POPの色で識別させるか、あるいは
「新車」と分類POPを付け加えます。
【特徴を説明してくれる】
商品のスペックだけでなく、モデルの特徴やお勧めの理由なども明記することでお客様は商品に興味を持ってくれ
ます。「〇〇仕様なので初心者向けでとても軽い乗り心地」「○○さんデザインでグッドデザイン賞受賞しました」
「F1モデルです」等、店側のコメントも書くと話のきっかけにもなります。
【告知してくれる】
店外の販促POPの項でも説明しましたが、セールやキャンペーンの告知をするPOPです。店内では来店客全員に訴える
必要があるので期間中店内全体に広く設置しましょう。店外ではのぼりをリピートさせると効果的です。
【店内にメリハリをつけて回遊率を高める】
定型POPの他にさらに特記する言葉を付加える「ワンモアPOP」はおススメです。自転車はターゲット層が広い分、
来店客の選ぶ基準が様々です。「学生さん向け」「お迎えやお買い物に」「訳あり値引き中」「試乗出来ます」
「人気モデル」等、お店が勧める商品にお客様は興味を持って、店内をどんどん歩いもらえます。お客様は「買う
理由」を探しています。数ある商品の中で、自分に最も適した商品まで誘導して欲しいのです。
その他、POPデザインの統一についても指摘しました。表記方法や紙の色がバラバラだった店がいくつかありました。
見る側が比較検討しやすい様、また、店内の統一感が保たれる様、留意して制作しましょう。POPもインテリアデザイ
ンの一部です。また、POPが多すぎるとPOPの洪水となり、ゴチャゴチャとした店内になるので気を付けましょう。
⑤試乗などの体験による販促活動
見込み客に試乗させていない店は、色々と事情があり、店側にとってリスクが多い場合もある様です。
高額商品を検討しているときは時間をかけて理解、納得、信用してもらわなくては心理的な負担を取り除く
ことができません。事実、高級寝具や自動車の販売では、体験後の成約率の方が断然多いことが判明しています。
また、試乗以外でも、店頭でのコミュニケーションの回数を増やすほど店頭決定率は向上します。店員の丁寧な
対応や知識レベルが信頼を形成し、ストアロイヤリティを構築できるのです。通販でなく、実店舗に行って購入
することに付加価値を感じてもらうには、顧客満足度(CS)を向上させる「コト訴求」も今後は欠かせません。
DM発送、試乗するまでの手配、お客様が感じている「不」への対応など、きめ細かいサービスを経て信頼が得
られるのです。最後に。
私自身は、普段バイクや自転車に乗りません。この度の研修に際し、たくさんのバイク店を観察し、完全な消費者目線
でバイク購入時の顧客心理について考察してみました。
バイクや自転車に限らず、すべての商品販売にも言えますが、レイアウト、POPの作り方、店内のインテリア、
ディスプレイ、お茶出しのタイミング、丁寧な説明など、すべてが「お客様目線」を軸に売り場作りを行っている
お店には、やはり愛着を感じます。
今回売り場を診断した際、バイクや自転車購入は、従来から「完全な目的買い」であるという既成概念が、未だに根強
く売り手側の意識に残っていて、それが売り場作りにも表れていると感じました。ただ必要を感じて買いに行くのなら、
わざわざその店に行かなくとも通販で購入できます。独自性が出しにくい商品をどのように訴求し、売っていくか?
やはり顧客目線での売り場作りと丁寧な接客に共感してもらうことではないかという見解に至りました。
その店に行く価値をお客様に感じてもらうためには、十分なヒアリングによる双
方向のコミュニケーションをとり、「必要だから」だけではなく「自分に似合うバイクが欲しい」「カッコよく乗り
こなしたい」というお客様の隠れた要望を引き出し、バイクや自転車のある楽しいライフスタイルを提供して頂きたい
と思います。